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脱塩:ゲルろ過クロマトグラフィー
ゲルろ過クロマトグラフィー(Gel Filtration Chromatography, GFC)はサイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography, SEC)とも呼ばれており、カラム内の多孔質の充填剤で物質をサイズごとに分離することで、タンパク質の分離や精製を行います。
図1は原理を示します。カラムに充填剤を詰め、充填剤に小さな穴が開いています。
この充填剤に試料を流すと、小さい分子はその小さな穴に入り込むため、移動距離が長くなり、溶出時間が遅くなります。
一方、タンパク質のような高分子は穴に入れないため、速い時間で溶出されます。

カラムのサイズは長さ15-100 cm、半径がおおよそ5-20 cmと幅広く、タンパク質を分離した後の使用目的に応じて、様々なサイズがあります。また、用途に応じて使用される充填剤の材質や粒子サイズ・細孔径も異なります。例えば、充填剤の材質によって適用可能な溶媒(すなわち、水系か非水系)が異なり、充填剤の粒子サイズや細孔径は分離可能な分子サイズの範囲が変化します。
カラムの性質は異なりますが、分離の原理自体は変わりません。
どうやってやるの?
実際に脱塩に使用したカラムをご紹介します。今回は、オープンカラムで分離を行いました。
オープンカラムは図2のように、セットアップを組みます。

オープンカラムでは、重力によって溶液が落下し、落下したものを分取します。
この方法は、高価な装置は必要ありませんが、時間がかかることと、分離の再現性が悪いという欠点があります。
市販のカラムはもちろんありますが、充填剤がさえ手に入れれば、自分で作成することも可能です(図3)。
今回はCytiva製Sephadex G-50という樹脂を使用し、10 mLのシリンジに充填させ、自作カラムを作成しました。シリンジの底にちょびっとシリカウール(長さ1 cm程度)を詰め、Sephadex G-50の充填剤をその上から流しました。充填用の溶媒には超純水を使用しました。また、比較しやすくするために、充填剤の高さは市販のものと揃えました。

図3 オープンカラムの写真。自らで作成できるカラムと市販カラム(Cytiva製)のどっちでも使用可能です。
タンパク質の脱塩をしてみましたが、両方は問題なく分離に成功しました。
ただ、市販カラムの方では、充填剤の上に充填剤の表面が動かないようにディスクをはめてあります。
自作カラムではそのようなディスクを入れていないため、脱塩する際に、充填剤の面を乱さないように気を付けながら試料を入れる必要がありました。
市販カラムはこの点を含んで、細かな部分まで考慮しているので、やっぱり企業努力のおかげで、使いやすかったです!笑
雑談をやめ、脱塩をしたデータをご紹介します。
例として、今回のタンパク質溶液にはヘモグロビンを使用しました。ヘモグロビンは、赤血球に含まれるタンパク質であり、血液中の酸素を運ぶ役割を担っています。主に鉄を含むヘムと、グロビンというタンパク質から構成されております。この溶液を希釈するために、リン酸緩衝食塩水(PBS)を使用しました。
ヘモグロビンには鉄、PBSにはナトリウム、リンとカリウムが入っており、脱塩ができるかどうかを検証するために、元素分析ができるじゃん!と思い、評価として誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS法)で測定を行いました。
カラムに試料を流し、溶出されたものを1.5 mLマイクロチューブでフラクションを回収しました。最初に出てくるものは超純水のみと予想しているので、最初の2つのフラクションは1.0 mLずつ回収し、その後の各フラクションは0.5 mLずつ回収しました。その回収されたフラクションは図4に示しました。
色が淡くて見にくいかもしれませんが、4番目のフラクションからは薄い茶色の溶液を回収したとわかりました。薄い茶色溶液は5と6番目のフラクションにも観測され、その後のものは透明な溶液でした。

図4 回収した15個のフラクション
そして、回収した各フラクションを100倍希釈し、ICP-MSで分析した結果は図5のようです。
赤線は鉄、黒線がナトリウムの結果を示します。鉄(ヘモグロビン)の信号強度は4番目のフラクションで最も高くなり、その後下がっていきました。一方、ナトリウム(塩)の信号強度は逆の傾向を示し、最初は低かったが、12番目のフラクションで頂点を達しました。この結果は図4のフラクションの色に反映されました。
この結果から、フラクション3ー6のみを回収し、塩なしの溶液をコンビニ・エバポで濃縮できるので、濃縮する際の塩濃度が高くならなくて済みます。タンパク質の脱塩で、完全に塩を除去できないことに困っている方がいらっしゃいましたら、参考になれば嬉しいです!
図5 ICP-MSによって計測した結果




