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はじめに
癌や病気の診断に使われる病理検査では、細胞レベルで病変組織を詳細に観察するために、組織を数ミクロンの厚さに薄く切る必要があります。このように薄くスライスした組織切片は、スライドガラスに貼り付けて染色し、その後光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察されます。
この薄切片を作成するためには、「ミクロトーム」という装置が使用されます。
ミクロトームは生物学的分野だけでなく、材料科学においても重要です。例えば、材料内部の構造や欠陥を分析する際に必要となる薄片を作成するために利用されています。
弊社では、ミクロトームを新しく導入しましたので、ご紹介できればなと思います!
導入したミクロトームは、大和光機製の高性能ミクロトーム(リトラトーム)REM-710です。この機種は、手動と電動のメリットを融合して、さらなる使いやすさを実現した滑走式ミクロトームだそうです。
マニアックな方は思ったはずです。「ライカじゃないミクロトーム?」と。
ミクロトームと言えば、ライカ社製!というのが定番だと思いますが、ここで使用しているのが大和光機製の装置です。
その理由は、、
- リトラトームREM-710の操作性が高い
- リトラトームREM-710は軟らかい組織から硬い材料まで対応できる
- ライカ製のお値段...苦笑

図1 2024年に新しく導入したリトラトームREM-710
アスパラガスとレバーの切片の作成
試料はスーパーで購入したアスパラガスと鶏レバーの切片を作っていきます。
ミクロトームを導入して間もない頃だったので、切片作成の練習を兼ねて作っていきます。
ちなみに、今回はミクロトームを使用して二回目です!
まず、試料を図3のような樹脂容器に入るようなサイズ(数cm程度)に切りました。室温でアスパラガスや鶏レバーのような軟らかい試料は切削が難しいので、凍結固定をする必要があります。切った試料を樹脂容器に入れ、樹脂容器に包埋剤を加え、凍結します。
そして、凍結された試料と包埋剤ごとにミクロトームの試料台に移し、切片作成の準備をします(図4)。

図2 スーパーで購入した鶏のレバー

図3 切片作成のために、試料の固定が必要です。ここでは、試料を包埋剤に埋めて、凍結するまで待ちます。

図4 包埋剤を凍結させたらカチカチになります。試料をミクロトームの試料台に載せ、切片作成をします。
アスパラガスも鶏レバーと同様に包埋剤に固定しました。今回はアスパラガスは二方向から切っていきました(図5)。
アスパラガスの全長の1/3を切り分け、先端、中間と下端としました。先端部は切面①のように切断し、下端部は切面②のように切断しました。
それぞれの先端部と下端部は図3のように、包埋剤に埋めてから凍結をし、ミクロトームの試料台に載せ切片を作成しました。試料台を上昇させ、鋭いミクロトーム刃を試料表面に沿って前後に動かすことによって、切片を作ることができます。

図5 アスパラガスの切面
切片作成の様子を録画しましたので、下の動画をご覧ください。
ミクロトームによる生体試料の薄片の作成
ミクロトームによってスライスされた切片は、スライドガラス(2.5 cm x 5 cm程度)に載せました。2 cm x 2 cmの大きさの試料であれば、弊社のイメージングシステムで分析できます。
切片が厚くなるほど、肉眼で見られるような色に近付いていきます(図6)。
通常の病理診断では、作成したこの切片を染色し顕微鏡で観察するのですが、私たちは、測定対象となる有機成分がどこに分布をしているかを知りたいため、あえて切片を染色せずに、「質量分析イメージング」をします。

図6 様々な厚さのレバー切片
質量分析イメージングは、名前の通り、質量分析計を用いてイメージング分析を行う分析手法です。
この手法の最も大きな特徴は、組織のような固体試料を溶かさずに、固体試料として直接分析できることです。
今回イメージング分析に使用した厚さは両試料とも15 µmでした。
質量分析イメージングの結果
まず、作成した凍結切片を、顕微鏡で観察しました。それぞれ図7ー9の左側の画像で示します。
よーく見ると切片にシワが入ったり、形が歪んだりしているので、まだまだ練習しないといけないですね...
せっかく切片を作ったので、それぞれの試料を質量分析イメージングで分析してみました。
全ての成分は一度の分析で得たものです。
分析の後で、目的の成分の質量数を選択するだけで、何成分でも画像化できます。

図7(左)アスパラガスの顕微鏡写真、(右上)アスパラギンと(右下)グルコースのイメージング画像

図8(左)アスパラガス(断面)の顕微鏡写真、(右上)アスパラギンとのイメージング画像、(右下)アスパラプチンのイメージング画像

図9(左)鶏肝の顕微鏡写真、(右上)鉄と(右下)コレステロールのイメージング画像
とにかく今回は、切片作成からイメージング分析まで持っていけてよかったです!
引き続き、ミクロトームのテクニックをレベルアップするようにがんばります!!




